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戦国終わらず・18

2011.01.18 - 戦国終わらず
そういえば、過去の話を全部読み返していないのでまだ確認してないのですが、元号で元和が出ていたら、それは大嘘です。豊臣家が滅亡したので慶長から元和に変わったので。
1615年はこの話の中では慶長20年のままということになります。

これまでの話          10 11 12 13 14 15 16 17


大坂。
豊臣家から各国の大名に再普請への要請が出されて2ヶ月ほど。
現時点ではまだ城の普請には至っていない。主に戦場となった街などの再建が進められていた。
「これでいかがでございますか?」
そんな中で藤堂高虎が津から参じてきた。新しい大坂城の縄張り図を完成させて、豊臣秀頼の下に持ち込んできたのである。
「ほほう。これが新しい大坂の城か。うーむ…ふむ、ふむ」
図面を見せられた秀頼は何やら相槌を打っている。が、実際のところはよく分かっていない。戦場の経験もほとんどないので、それぞれの施設の意味がよく分かっていない。用途が分からないのだから、城の構えがどの程度の防御力をもつのかというのも分からない。分かることといえばせいぜい前の堀の位置と新しく作られる堀の位置の違いくらいである。
「大体こんなものでよいかと思うが、大野らとも相談するゆえ、しばらく待ってくれ」
そう言って、一旦高虎を下がらせる。高虎は殊勝に「ははーっ」と平伏していそいそと出て行った。
足音が遠くなったのを確認して、秀頼は母親に尋ねる。
「母上、これでよろしいのでしょうか?」
見せられた母親の対応。
「う~む、これでは前の大坂の城と大きさがほとんど変わりませぬ。せっかく秀頼様のために再普請するのですから、以前よりも、より大きなものを造るように命ずべきではございませんか?」
こちらは城の中身よりもスケールのみを問題としていた。
しばらくすると大野兄弟が現れる。
「おお、治長、治房。藤堂がこのような縄張り図をもってきたが、確認してくれぬか?」
「ははっ」
2人も丁寧に縄張り図を確認する。が、この二人もどうもピンと来ていないらしい。
「うーむ、色々拝見させていただきましたが、某にはどうもよく分かりませぬ」
主君親子よりマシなところは変な見栄を張らない程度であった。

4人が雁首揃えて、縄張り図に対して思案に暮れること一日。
そこに宇喜多秀家が挨拶に現れた。
「おお、明石にでも聞けばよいではないか」
大野治長が来訪を聞いて思わず手を打つ。外面はどうあれ、秀頼も淀の方も中身について自信がないので。
「確かに明石は戦上手であるな」
「明石殿の意見も参考として聞き入れるのはよろしいことでしょう」
とあっさりと賛成した。

程無く宇喜多秀家が明石全登とともに天守に現れた。
「お久しゅうございます…。ご立派になられまして」
宇喜多秀家が涙ぐみながら深々と一礼する。
「中将殿は随分と苦労されてきたのだのう…」
二人が最後に会った時、秀頼はまだ7つの子供であり、秀家は貴公子として有名であった。
しかし、今や秀頼は当主として呼ぶにふさわしい大柄な青年に育ち、一方の秀家は長い流罪先での生活で線が明らかに細くなり個、表情も達観した僧侶のようなものに変わっていた。
「亡き父の豊臣家の屋台骨は中将殿じゃ。これから大変になるだろうが、よろしく頼むぞ」
「ははっ」
「それでいきなりなのじゃが」
「?」
秀頼は早速藤堂高虎の持ってきた縄張り図を示す。
「これは藤堂が持ってきたものじゃ」
「…大坂城の新しい縄張り図でございますな」
「うむ。大体そんなものでいいような気もするが、せっかく中将殿が来てくれたのであるから意見を聞いておきたいと思ってな」
「某は長いこと戦場から離れておりましたゆえ、最近の戦のことはとんと分かりませぬ。こういうことは明石に見せた方がよいのではないかと思いますが」
「そうか。それでもよい」
秀頼は頷く。秀頼だけでなく、淀の方も大野兄弟も「そうしてくれ」といわんばかりに頷いている。
「どう思う? 掃部」
秀家に促され、全登が縄張り図をしげしげと眺める。5人がその様子をじっと眺めている。
「某にはこれでほぼ問題ないように思います。堀を埋められる前の大坂城とほぼ同じくらいの力が見込めるでありましょう」
「おお、そうか。貴殿にそう言ってもらえると安心した」
最後ちらりと本音が口に出た。

その後、大和国の資料などを渡され、雑談などをして時間が流れる。
夕刻になろうという頃、秀家は全登とともに大坂城を後にした。
「のう、掃部」
戻りがてら、秀家が声をかける。
「先ほどの縄張り図だが、本当にあれで問題ないのか?」
「…と申されますと?」
「何というか、具体的にこう、というのがあるわけではないのだが、どうもあの縄張り図だと不安なような気がするのじゃが」
「そうでございましょうか?」
「いや、お主の戦の力量はよく知っておるゆえ、お主の目を疑うつもりはないが、ただ、何というか」
「さすが殿。ご慧眼感服つかまつりました」
「…む?」
「確かにあの縄張りだといざ実際戦になった時に不便な部分はございます。と言いますのも、あの縄張りですと見かけの防御力は非常に高いのですが、籠城した際に兵の移動に苦労するような出来になってございます。優れた将才…例えば藤堂殿であれば何の問題もないかと思いますが、秀頼公や大野兄弟では手に余るものでございましょう。また、大坂の陣のように幾つもの部隊の手勢が部署を掛け持ちする場合、連携を欠くと防衛力が非常に弱まるものと思われます。城主のことを考えれば、もう少し簡単な作りでもよかったのではないかと存じます」
「…それなら何故言わなかったのだ?」
「…私は大坂に入る際、秀頼公に2つのことを約束いたしました。そのうちの1つは果たされましたが、もう1つの約束は果たされぬままでございます。それがない以上、某が秀頼様のためにあれこれ身を尽くす義理はございませぬ」
「……分かった。切支丹の件、後日秀頼公と掛け合ってみよう」
秀家の言葉に、全登は無言のまま深々と頭を下げた。

3日後。
要請を受けて大坂城の天守にやってきた藤堂高虎に秀頼が声をかける。
「皆で色々確認した結果、この縄張り図で問題ないとのことであった」
「ははっ。それでは直ちに」
「あ、いや。しかし母上から一点だけ要請があってな」
高虎の視線が一瞬だけ険しくなった。ただ、すぐに表情を取り戻したので、あからさまに違和感を感じた者はその場にはいない。
「…何でございましょう?」
「このままの縄張り図だと、父上が築いた城と同じ大きさになってしまうが、それは母上にとっては気に入らぬことのようでな。できれば、もう一里ほど拡張した縄張り図を作ってもらいたい。それが出来れば、直ちに取りかかってくれ」
「はぁ……。あ、承知いたしました」

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Comment

無題 - grendel

2011.01.19 Wed 22:45  [ EDIT ]

さすが川の果てさん、現代に伝わる藤堂高虎像をよくお表しで。
今にも「ククク・・・」って声が聞こえて来そうですね。
きっと今ANKの名をはせ・・・順番が逆でした(笑)

>grendel様 - 川の果て

2011.01.20 Thu 08:55 URL [ EDIT ]

高虎の場合はANK以上に何を考えているのかはよく分からなさそうです(笑)

このあたりの煮ても焼いても食えなさそうなのは好きなのですが、そういうのばかりになってくると収拾がつかなくなりそうです。

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