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「戦国終わらず」その11

2009.11.27 - 戦国終わらず

各地の大名の動向を追い続けているせいか、ちっとも進まない。11話まで進んでるのに、まだ話は1ヶ月も進んでないし…

話の大筋:大坂・夏の陣で豊臣方牢人衆が徳川家康を討ち取ってしまった。さあどうなっちゃうの? ということで。
これまでの話          10

6月8日。
徳川家康、秀忠の葬儀に先駆けて、伊達家臣真田幸村は江戸にある福島正則の屋敷を訪ねていた。
福島左近衛権少将正則は55歳で幸村より6年年上である。羽柴秀吉の武将として天正11年の賤ヶ岳の戦いで大活躍をし、以降豊臣子飼いの重臣としての地位を固めている。
しかし、政権晩年においては石田三成と対立し、関ヶ原の戦いでは東軍についてその先鋒として激しい戦いを繰り広げた。その功績があって安芸広島に50万石近い領国を与えられていたが、加藤清正ともども豊臣秀頼に対する忠節は曲げず、徳川幕府にとっては油断ならない存在と見られていた。
そのため、大坂の陣では(蔵屋敷にあった8万石の蔵米を大坂方に接収されるのを黙認していたこともあって)江戸に事実上の軟禁状態に置かれていた。
それを、伊達政宗が松平忠輝を通じて、徳川家光に対して解除させることにしている。正式には葬儀の後ということになるが、その前に幸村を通じて折衝をしておこうという意図があった。
そんな政宗の意を受けた幸村ではあるが、彼自身にはまた彼自身の興味があった。幸村はほとんどを上田で過ごしていたのであるから、中央で活躍している福島正則のことはほとんど話でだけでしか聞いていない。豊臣きっての猛将で、徳川家康が恐れて軟禁させていたほどの人物に興味があった。
のであるから、会った瞬間に幸村は声には出さないが大いに驚くことになる。
(これが…福島左近権少将?)
幸村が驚いたのも無理のない話で、初めて会った正則は55歳という年齢以上に老けているように見えた。年齢以上に老けている外見という点では幸村もあまり人のことは言えないが、14年近く紀伊山中に押し込められていた幸村と違い、正則は第一線で長らく活躍していた人物のはずである。それがこうも覇気のない顔をしている人物とは想像もつかなかった。
「お主が真田左衛門佐殿か…大御所を討ち取ったそうだな?」
声もしわがれていて、覇気がない。仮に戦場に出たとして、部下が聞き取れるのかどうかすら覚束ない。
「はい。敗戦間違いなしと思っておりましたが、とんでもない幸運に恵まれたようです」
「左様か…」
正則は下を向いて考え込む。大柄ではあるのだが、今の正則には覇気の無さからも来るのであろうが、それほどの大きさを感じない。
「わしを解放するということだとか?」
「はい。徳川と豊臣の関係改善のためにまた尽力していただきたく存じます」
「大御所を討った貴殿が徳川と豊臣の関係改善というのも不思議な話だが」
「戦場は戦場であり、終わりますればまた別にございます」
「…そのようなものであるか」
「はい。左様でございます」
「だがのう、わしには秀頼公に会わせる顔もない」
「そのようなことは…」
「もう疲れたのだ。わしには清正のように徳川と豊臣の関係を維持するための心細やかなことはできん。もう疲れた。上様にも秀頼公にも隠居を願い出たい」
そう言って、本当にしおれたようにうつむいてしまう。
「…しかし、隠居されれば所領の一部を没収されてしまうことになるやも」
「構わん。今の50万石はわしには重過ぎる。それにわしの息子にしても重かろう。身の丈に合わぬものを持っていても後々不幸なことになる」
「…そう申されますが」
幸村は翻意を促そうとするも、正則は頑として隠居を求める姿勢を崩さない。
結局、最終的には幸村の方が折れることとなった。
「あくまでそう申されるのなら、そのようにしていただくよう取り計らうことにいたしましょう」

福島邸を出た幸村は暗い顔をしながら、伊達邸へと戻ることになった。
(猛将として知られた人物なだけに、政治の舞台での消耗は人一倍堪えたということなのだろうか)
幸村はそう思い、自分も前面に立てばああなるのかもしれないという不安を抱く。
(まあ、某の場合は前面に立つということはないのであるがな)
そんなことを考えながら伊達邸の前に戻った幸村は二人の笠をかぶった男が立っていることに気付いた。
「真田様でございますか?」
「そうであるが?」
二人のうちの一人が笠を取る。
「某のことをご記憶でおられるでしょうか?」
笠の下から老人の顔が現れる。もう一人も笠を取り、こちらは老人よりは若いが似た顔立ちをしていた。
幸村の顔が緩む。
「おお、但馬、但馬ではないか!」
覚えていないはずがない。その男は兄・信之の家老を務めている矢沢頼康であった。とはいえ、その父昌幸の代から重鎮として真田家の中で重きをなしていたし、幸村が若い頃、上杉景勝の下に人質として出された時に随伴もしている。
「お久しゅうございます」
「うむ、そなたが来ているということは?」
「はい。伊豆守様が久々にお会いしたいということで、こちらを訪ねて参りました」
「兄上が?」
幸村は身を大きく乗り出し、危うく馬から落ちそうになるほどであった。
「来ていただけますか?」
「無論だ」
ここに向かうまでの暗い顔つきはすっかり消えていた。

矢沢頼康とともに、幸村は真田家屋敷へと向かった。途中、馬に乗る幸村が首をかしげる。
「いかがなさいました?」
「気のせいかもしれぬが、このあたりは随分と女子が少ない」
頼康が「ああ」と頷くような声をあげる。
「ここだけではありません。江戸自体で女子は少ないのです」
「ほう」
「元々、江戸は大御所様が太閤殿下より移転を命じられて作った人工の街。元から多くの人がいたわけではありませぬ。人を移らせて街を作る場合、男と女子とどちらを優先いたしますか?」
「…それはまあ、男であるな」
「そういうことです。ただ、男女の数があまりにも不釣合いだと心身によろしくない部分もありますから、大御所は公営遊郭を作ることで大きな問題にはしないようにしているのですな」
「なるほどのう」
頷いていると頼康の馬が止まる。
「ここが…」
「はい。伊豆守様の屋敷にございます」
頼康に連れられて入った幸村は、奥の間へと連れられていった。
「殿、源次郎様をお連れいたしました」
「入れ」
短い声に、幸村は襖を開ける。狭い部屋の中に、10年前とほとんど変わらない真田伊豆守信之の姿があった。その信之は、幸村を見て、僅かに目を見開く。
「幸村、老いたな…」
信之の第一声。確かに幸村は年齢以上に老いているように見える。
「兄上は老いませぬな…」
「そうか? これでも大分体は動かぬようになった」
「左様でございますか。しかし…」
幸村は兄の前に正座する。すぐに頼康が部屋を出て行き、変わって侍女が茶を持ってきた。
「む?」
「先ほどお会いした福島殿は某より遥かに老いてござった」
信之の顔が真顔になる。
「…左様か」
「某も九度山で辛酸を舐めましたが、福島殿も相当に辛い状況にあったのでありましょうな」
「だろうな。あの御仁はそういう駆け引きができる仁ではない」
そう言って、小さく笑う。
「伊達殿は福島殿を使って豊臣と徳川の関係をつかず離れずにしておきたいのだろうが、それは難しいだろう」
「…見抜いておられたか」
「俺も伊達に荒波の中を泳いではおらんからな」
「では、兄上はこれからどうなると思います?」
「さあ…」
信之はすっとぼける。
「さ、さあ…というのでは」
「分かるわけがなかろう。そもそも、おまえが大御所を討つなどということ自体、一体誰が予想できていたというのだ? おまえだって討てるという見込みは半分もなかったのではないか?」
「…それはそうなのですが」
「武運というのはそういうものだ。俺は父上やおまえには到底及ばぬが、その父上やおまえでも戦の全てを見通せるわけではあるまい。まあ、父上の場合は兵数が少ない戦が多かったから、誤算の範囲も少ないし、ある程度見通しも立てられたのやもしれぬが、仮に父上が大坂にいたとしても、戦の全てを見通すことは無理であったろう。そもそも戦いを見通せなかったから、父上とおまえは関ヶ原で西軍についたのであろうしな」
「……」
「おまえは息子を大坂に残していたらしいが、それも結局は見通せぬからであろう?」
「その通りです」
「別に責めているわけではない。それが普通なのだ」


信之モードのまま続く?

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