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2011年は勝てるのだろうか…?
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話の大筋:大坂・夏の陣で豊臣方牢人衆が徳川家康を討ち取ってしまった。さあどうなっちゃうの? ということで。
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信之が話し続ける。
「俺は父上やおまえほどの軍略の才能はない。ただ、才能が無いからこそ余計な前提を考えない。それがゆえに大過なくここまで来たのであって、普通だからこそ自然に生きられる部分もある」
「それはそうかもしれませんが…」
幸村は問い返す。
「さりとて、先の展望がまったくないようでは信念ある行動はできないのではありますまいか? 無論、信念なき生き様も一つの在り様ではありますが、某が遠くから兄上の動向を聞いていたところ、兄上はそのような信念なき根無し草のような立ち居振る舞いをしてはいないように見受けられます。兄上の自然体は理解できるにしましても、展望について某はお聞きとうございます」
「…この先の展望か?」
「はい」
信之は根負けしたように話し出す。
「まず、遠からぬうちに大坂から牢人がどこかに侵攻をするのは間違いなかろう。それはおまえの方がよく知っているのではないか?」
幸村は頷く。大坂城にいる5万の牢人衆は徳川に勝利したということで恩賞には預かれた。だが、毛利勝永や長宗我部盛親など何人かを除くと黄金などの動産が中心である。できることなら、土地を与えて権力基盤を磐石としたいところであろう。
「攻め込むのは…おそらくは播磨の池田だろうな。おまえの言うように福島殿が隠居するとなると、池田を倒すことで宇喜多殿の旧領がほぼ確保できる。越前の松平殿を前田殿に牽制させておけば、尾張以東の徳川軍は動けないだろうな」
「…左様でございますな」
「そこから先のことは何とも言えん。池田が降伏するか、最後まで戦うか、あるいは勝つかということまで勝手に決め付けることはできんからな…む?」
信之が障子の方に視線を向ける。
「殿…」
「才蔵か。どうした?」
信之の言葉に、幸村は忍びが情報を持って現れたのだと悟る。
「はっ。加賀越中にして前田筑前守が動員をかけているとのことです」
「前田が…?」
信之がけげんな顔をする。
「数日前に宇喜多殿を迎え入れるべく本田大和守を派遣したばかりだと聞くが随分慌しいな。それにまだ大坂も準備が出来ていないだろうに。あるいは牽制かな。幸村、おまえはどう思う?」
「…某にも少々早すぎるかと」
「まあ、江戸もまだ完全に落ち着いてはおらぬ。早いうちに攻めるのは一つの手ではあろうか。それはいいとして幸村、夕餉はどうする?」
「さて…考えておりませぬが」
「久しぶりじゃ。支度をさせるゆえ、ここで食うて行かぬか?」
信之の言葉に幸村が満面の笑みを浮かべる。
「願ってもなきこと。久しぶりに飲み交わしましょうぞ」
その夜、真田邸では一晩中明かりが消えることはなかった。
二日後。
品川湊に右大臣近衛信尋の姿があった。その傍らには酒井忠世、酒井忠利という江戸幕府老中の二人がおり、近衛信尋を挟んだ反対側に明石全登、本多政重、前田豪らの姿がある。
彼らは一様に海面の遥か遠くに目を凝らしていた。
一刻ほどして、海面の向こうに船の姿が映る。船が大きくなるにつれ、豪が侍女とともに抱き合うように喜ぶ。
「殿…」
「おお、豪。豪か…」
秀家の目にも涙が浮かぶ。別れてから15年が経っており、姿は大分変わっている。かつての貴公子然としたところはなくなっており、むしろ何かに達観した僧侶のような外見である。
「殿、よくぞご無事で…」
「豪、そなたの助けでどうにか生き延びることができた…」
秀家は後ろにいる二人の少年を前に出す。
「おお、孫九郎、小平治!」
「母上!」
二人の少年と豪が強く抱き合う。秀家と政重は涙ぐんでその様子を見ていた。近衛信尋も目頭を押さえているが、酒井忠世と酒井忠利の二人は面白く無さそうに見ている。
「近衛殿。これで良うござるな?」
忠世が近衛信尋に確認する。幕府と大坂との間で秀家とその一族を解放することが決まっていたため、その立会いとしてやってきていたのである。前田家はその身元引受人であり、近衛信尋は不測の事態が起きた時に仲裁役を務めるべく現れてきていたのである。
「左様でございますな」
「それでは、我々は城の方に戻りますゆえ」
幕府からの二人は信尋にのみ頭を下げて、その場を後にする。
「では、宇喜多殿。我々も引き揚げましょうぞ」
役割が終わった近衛信尋は早く戻りたいとばかりに先を急ぐ。秀家、豪が息子達とともに続き、最後に本多政重が見守るようについている。
「本多殿」
その時、不意に後ろから声をかけられ、本多政重はびっくりした面持ちで振り返る。
「む、貴殿は…」
顔に見覚えはある。政重は記憶を辿って、小さく声を出した。
「真田殿ではないか。いかがなされた?」
「いや、何。貴殿に少々聞きたいことがござって」
「某に?」
「前田殿が戦支度をしていると耳にした」
信之のいきなりの言葉に政重が思わず咳をする。その咳に前を歩いていた一同が次々と振り返った。
「あ、いや、面目ござらぬ」
政重は頭を下げて、一同を先に行かせた。姿が見えなくなると、険しい顔で信之を見る。
「そのような話、どこで耳にされたのですか?」
「某のところにも、源次郎ほどではないにしても有能な忍びがおってな」
「……」
政重が参ったというような顔をする。
「して、それが事実と分かれば真田殿は何を?」
「何もせぬ。しようがないという方が正しいかな。ただ、我が所領は犯さずにいただきたい、ということを前田殿に伝えておいてほしい」
「…真田殿の所領?」
政重が唖然とした顔をする。
「仮に我が殿がどれだけ大きな勝ちをしたとしても、真田殿の所領に至ることはなかろうかと…」
政重はそう答え、信之の顔を不思議そうに眺める。信之はほとんど表情を崩さず、
「左様でござるか。それならばそれで宜しいのであるが」
とだけ答えて、本多政重の肩をたたく。
「それでは、よろしく頼みますぞ」
叩いて、そのまま信之も去っていった。その後姿を見送る政重が首を傾げる。
「…一体、何のことなのだろうか?」