川の果ての更に果てに

さて、サビオラタンが寝返ったので人魚姫は月に行かせてもらうべくかぐや姫のところに交渉に行くことにしました。

一方、サビオラタンが寝返ったと聞いて、かぐや姫は怒り心頭に達していました。
「人がせっかく恩顧にかけていたというのに、相手が少しお金で釣った途端にＦＡ宣言で出て行くなんて…」
「そのうち、向こうの方から攻めてくるでしょうしチーム強化の方針を転換しないといけませんかな」
「その通り」
かぐや姫はベテランを大量に解雇して、チームに強烈な鞭を入れました。
王監督 若タカに“強烈ゲキ”（西日本スポーツ）

更に、意欲ある若者を募るためにブログで応募してきた者も積極的に鍛えました。
京都・上七軒の市照さんがネット応募の舞妓デビュー！（サンケイスポーツ）

こうして鍛えられた若手達がエブエー、ウォルコット、ジュルー、クリシー、ファンペルシー、セスク、センデロスという七人の銃士達でした。彼らはジ・ダンとサビオラタンの討伐と人魚姫の捕獲を命じられました。
彼らはジ・ダンにとって替わろうと意気軒昂でした。

ガコン、ズコン、ドタン。

しかし、ジ・ダンが次々と頭突きで倒していき、たちまち七人衆は蹴散らされてしまいました（酷い扱いだ[笑]）。
「ジ・ダンは正統派でも、場外乱闘も一級品。何て頼りになるのでしょう」
人魚姫がジダンの禿げた頭をなでていると、ジダンは不意に離れていってしまいました。
「親父、どないした？」
ただならぬ様子に子犬のリベリーが駆け寄りました。
「引退？　そんなこと言わんといてや」
しかしジ・ダンの決意は変わらず、突然去っていってしまいました。ジ・ダンは大人しいですが、他人に意見すらさせない何とも身勝手なフランス犬らしいフランス犬でした。
しかし、ジ・ダンがあらかた討伐隊を片付けていたので、楽々かぐや姫の住むところまでたどりつくことができました。
「気をつけるぴょん。かぐや姫の周りには月からの護衛隊が沢山いるはずだぴょん」
「それは強いのでしょうか？」
「強いぴょん。メッチーという小さいライオンがいるぴょん。すごく速い上に30秒に一回相手に肘打ちをかまさないと気が済まない荒くれ者だぴょん。メッチーを中心に月の軍勢は今、若手が驚異的勢いで使われているぴょん。貢献者もことごとく粛清して若手を使っているぴょん」
「若手への大幅入れ替えは時としてチーム崩壊を招くっつうけどな。鷹も小久保をＦＡで戻すゆうやないか。でも、何で月にいるのはアルヘンなんや」
「それは伯剌西爾が太陽なら亜爾然丁は月のような存在だからぴょん。我々アルヘンの者はカナリアという太陽をいつもねたんでいるぴょん。カナリアに対する妬みというハングリー精神こそがボクタン達セレステ・イ・ブランコの強さの源泉だぴょん」
「ごっつ偏見な気もするが、とにかく相手は強いゆうことやな」
「そういうことですよ」
突如後ろから声をかけられました。
「誰や？」
子犬のリベリーが振り返った先には小さな獅子がおりました。
「メッチー！」
「ここから先へは行かせませんよ」
威風堂々とした獅子のメッチーが立っていました。シュッシュッと肘打ちの練習もしています(笑)
「行かせん言われて『はいそうでっか』と引き下がるわけにはいかんのや」
子犬のリベリーとネコのズラタンが構えようとしたところでサビオラタンが前に出ます。
「ここはボクタンに任せるぴょん」
「おんや～、先輩。このメッチアス（メッチーとメシア[救世主]を合わせた造語）とやろうって言うんですか」
「やるぴょん」
「先輩はご存知ないんですか？　獅子（レオ）はウサギ（コネホ）を倒すにも全力を尽くすという諺を。同じチームの同胞の先輩だからとて容赦はしませんよ」
「望むところだぴょん」
「さ、サビオラタン…」
「早く行くぴょん。かぐや姫はそうそう待ってくれないぴょん」
「…くく、すまん。戻ってきたら給料を二倍にするからな！」
「…あの、私に断りなく勝手に決めないでください」
そうは言いつつ、人魚姫と子犬のリベリー、そしてネコのズラタンは涙を流しつつサビオラタンを場に残し、かぐや姫の待つ竹やぶへと向かいました。

…次でようやくかぐや姫シリーズが終わる、はず…