[前回までのあらすじ] → ◆
さて、ネ申竜の呼び出し方は分かるようになった人魚姫一行ですが、ドラゴンポールを保持しているのはがちょう番の娘です。がちょう番の娘の居場所が分からなければ意味がありません。
そこでロマン王はタマネギ親衛隊を各地に派遣し、がちょう番の娘の居場所を探しました。
そして、とある地方を通りかかったところ、不思議な噂を聞きました。
「この地方では、最近夜な夜な幽霊が出てきて、しかも若い娘が急死する事件が続いているのです」
「あの女だ!」「あの女の仕業や!」
ズラタンと子犬のリベリーが叫びました。
「…って、そんな吸血鬼みたいなことをするはずが…」
「人魚姫、あんたはあの女のことを何も分かってないからそないやわなことが言えるんや。あの女はごっつえげつない奴なんや」
とにかく、そんなこんなで一行は街に入りました。色々話を聞いているうちに、墓地のある教会が怪しいことが分かりました。
そこで、一行は町外れの教会に乗り込みました。
「…まさかここまで来るとはね」
がちょう番の娘が立っていました。
「ドラゴンポールをもらいに来たで!」
「フフフフ。何をたわけたことを」
「大体、おまえほどの黒い奴にはこれ以上望むもんもないやろが! ドラゴンポールなどもらって何をすんねん!?」
「決まっているでしょう。この世を真っ黒に染めたくるのよ」
「そ、そないな極悪なこと…」
「極悪? 子犬のリベリー、何を馬鹿なことを言っているのかしら?
光が強いからこそ、陰ができ、影の強さ弱さという差別や区別が生まれ、醜い争いが産まれるのです。これを極悪といわずして何というのでしょうか? その点、闇は等しく世を黒く覆い、全てを平等にしてくれるのです。これこそまさに至上の楽園というのではないかしら?」
「な、何て黒い考え…」
人魚姫はたじたじと後ずさりました。
「貴女達とのお遊びもここまでです。決着をつけてあげましょう」
「ち、ちょっと待て。こっちにはこれだけ人数がいるっていうのに、まだ出すつもりなのかよ?」
作者の処理能力を心配したズラタンが的確な突っ込みを入れました。
「今回含めてあと三話の我慢です。耐えるしかありません」
がちょう番の娘は構わず闇の戦士達を召還しました。日頃は純白の衣をまとう彼ら、しかし、一度闘いの場を変えると暗黒の衣をまとう闇の戦士となるのです。
ちなみに現在いる人魚姫陣営
●人魚姫 ●ズラタン ●サビオラタン ●クリスティアーノ・ロナウド ●子犬のリベリー ●ロマン・アブラデリッチ ●ドログバン少佐 ●シェフのチェンコ 合計8名
がちょう番の娘と闇の銃士達
●がちょう番の娘 ●ベッカムさま ●ゴン狐ラウル ●ロナウド大五郎 ●子猫のグティ ●聖人イケル 合計6名
「にゃんにゃん♪ おまえ達、余の下で働かぬか?」
現れた闇の戦士のうち、子猫のグティにネコ耳のロマン王が話しかけました。
「死ぬニャー」
子猫のグティが強烈な反撃をくらわし、ロマン王はゴキブリ走法で逃げていきました。
「さて、それでは雌雄を決しましょうか…」
がちょう番の娘が冷酷な笑みを浮かべました。
ゴン狐ラウルにはズラタンとサビオラタンが対峙しました。
「なあ聞いてくれっち」
ゴン狐ラウルがコンコンと鳴きながら話しかけてきました。
「オレっちは今まで、スペインのエースとして君臨してきた。お国のためにそれは多くのゴールも決めたさ。それがよ、最近ではちょっと収穫が悪くなったということで、オレっちは代表チームから外されてしまった。オレっちはケガをしていても我慢して貢献してきたのに、のりしろの少ない年寄りだという理由で差別されて出番を奪われた。可哀相だと思わないか? こんこん」
ゴン狐ラウルが哀しそうに話します。
「ぴょんぴょん。出番がない悔しさはボクタンもよく分かるぴょん。使ってほしいぴょん」
「だろ。酷い話じゃないか…」
「ぴょん。おまえとは気が合いそうだぴょん」
サビオラタンが無警戒にラウルに近づいた途端、
「もらった!」
ラウルは隠し持っていた棍棒でサビオラタンを殴りました。
「痛いぴょ~ん」
「て、てめぇ。何て卑劣な!」
ズラタンの非難もどこ吹く風です。
「オレっちは勝つためには何でもやるのさ。勝つためなら日頃ネコかぶることも気にしないし、でもいざ勝つためならシミュレーションをすることだって辞さない。手でゴールを決めて後で批判されようが気にしない」
ゴン狐ラウルはどこ吹く風。サビオラタンは目を回してその場にダウンしていました。
「ヌヌヌ。むっ?」
ズラタンは慌てて飛び上がりました。突然地面が開き、落とし穴が口を開いたのです。
「て、てめぇ、勝つためには何をやってもいいっていうのかよ?」
「オレっちはそのスタイルでタイトルを獲得してきたのさ」
今度は木の上から大量の槍が降ってきました。ズラタンは何とかかわして逃げ回ります。
次から次へとラウルの仕掛けたトラップがズラタンを襲います。
「ククク、ハハハハハ」
しかし、ズラタンは逃げ回りながら笑い出しました。
「…何がおかしい?」
「貴様はそのスタイルでタイトルを獲得したという。しかし、貴様は最近全然タイトルを獲得していないではないか! 見よ! 俺様の胸に輝くこのスクデットを!」
「くっ。剥奪された後、棚ボタでもらったチームに移籍してつけているスクデットをそこまで威張るか…」
「俺様は逃げながら思った。何故、貴様ほどの男が突然調子を崩し、タイトルも点も取れなくなったのかを。そして俺様は貴様の話を聞いて一つの仮説に行き当たった」
「仮説だと?」
「貴様は以前までチームを別の人間(イエロとかサンチス)に任せていた。そいつが光としてチームの責任を背負っていたからこそ、貴様は勝つためにどんなことでもすることができた、貴様が汚れ役を背負うことができた。しかし、貴様はイエロが引退して名実共にチームを背負って立つ存在になり、貴様のプレーがチームそのものの威光にかかわることとなった。となると、勝つために何をしてもいいなどということはできない。天下の『国王のまどりーど』の偉大なるカピタンが勝つために手段を問わない人間であると公に示すわけにはいかんからな。そんな迷いが貴様の牙を抜いた。貴様は一瞬の隙をも見逃さない獰猛なる虎から、世間の威光をうかがって生きる狐になりさがった」
「……」
「そして、それが貴様のプレーからも牙を抜いた。貴様は凡庸なパフォーマンスを繰り返し、いつしかスペインからいらないなんて言われるような存在になりさがった。
…貴様は主役になるべきではなかった。貴様は偉大なる脇役としてこそ、そのタイトルの数を競える存在だったのだ! 従って所詮は脇役! 偉大なる俺様に勝てるはずがなーい!!」
ズラタンが逃げ回りながら突然ダイナミックにジャンプすると、大柄な体からは信じられないバック転オーバーヘッドをラウルに決めました。
「…生きる場所を誤るほど哀しいことはない。俺様が脇役になれないのと同様、貴様は主役になったらいけなかったのだ」
ズラタンは言いたい放題でした。
さて、シェフのチェンコはロナウド大五郎と相対しておりました。
「ブー。おまえいい体しているブー。オイラもそんな体になりたいブー」
「おまえがそんなことをしても無駄、無駄、無駄」
「嫌味な奴だぶー」
と言いながら、大五郎は後ろの机にある料理をつまみ食いしています。
「……」
「美味しいぶー。おまえも北京ダック食べるぶー」
「ふん。その程度のものを美味しく食べているとは愚かな」
「ムッ。おまえ、オイラを馬鹿にしたぶー。そこまで言うならもっと美味しいものをオイラに食わせるぶー。おまえも名前にシェフを冠する以上は至上の料理を作るぶー」
「…いいだろう」
「おまえも鉄人なら一時間で作るぶー。課題は牛肉だぶー。美味しいステーキを作るぶー」
「……」
一時間経過。
「できたぞ」
シェフのチェンコが大五郎の前にディッシュを置きました。
「では、いただくぶー」
大五郎は一口口にしました。
その目がカッと見開きました。
「う、ま、い、ぞー!!!」
大五郎は猛スピードで走り出しました。眼前にある巨大な山脈の中に真っ向から向かっていくと口からレーザーを吐いて山ごと崩し、更にギューンと宇宙へと飛び出しました。
「この、まったりとしたしつこさのないすっきりとしたソース…ジューシーな肉汁の味を全く損なわない絶妙なバランス…そして、この肉の上についている野菜…しゃっきりとした味といい、彩りといい全てがパーフェクト…こ、この野菜は何だ?」
いつしか大五郎の周りには天使が飛び交っていました。宇宙に飛び出た大五郎は天使と光の渦に巻き込まれながら、天上の世界へと誘われていきます。
「これぞ、究極の料理!!」
「これで一人…」
シェフのチェンコはニヒルにつぶやきました。
あと3回ほど意味不明の脱線路線が続いた後、元の展開に戻る…予定。
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