川の果ての更に果てに

祖父母が、孫が連れ出したとすれば当然それも誘拐になるわけですが、例えば子供が孫を虐待しそうだということで孫を連れ出した場合にはどのくらいの罪になるのか（本当に虐待されていれば連れ去り自体が正当）。
最高裁は執行猶予付の判決を下したのだそうです。

孫連れ去り、祖父母に実刑破棄・執行猶予判決…最高裁（読売新聞）

高裁と最高裁の認定の違いとか事件の細かいところについては長いのでこちらの裁判所のページ（ＰＤＦ）を参考にしてもらいたいですが、誘拐（連れ去り）そのものに至るまでの経緯はもちろんのこと、誘拐後に孫が養育されていた環境なども考慮しているようです。
恐れを抱いたから実力行使…というのをどの程度まで認めるかというのは今後微妙な線引きが要請されるとは思いますが、今回については妥当な見方ではないでしょうか。
判決文の中に、「孫は親に引き渡されることを極度に恐れて外出も怖がるようになった」ということもあるわけですし、実刑だと幼児の立場がないわけですからね。

虐待の恐れがあるということで子供を助けようとしても、下手すれば誘拐罪になるかもしれないわけですが、こういう判決を機に少しは動く体制づくりになればいいのですけれどね。もちろん、実力行使を認めるがゆえの副作用も出てくるでしょうけれど。


連れ去りとは違いますが、産婦人科が子供を取り違えて本来は親子ではない者同士が親子として過ごしていたという事件について、間違えられて育てられた親子が都を訴えていた事件の高裁判決も出ました。

墨田産院の取り違え、原告側が逆転勝訴…都に賠償命令（読売新聞）

これも何とも酷い話ですが、実際自分がそんな立場になったらどうなるかとか想像もつかないですね。全く見ず知らずの人が実は本当の父親母親ということになるわけですが、40代も半ばになってじゃあ今更そちらの方にいけるかとなると。知らないほうが幸せなんてこともあるわけですが、これなんかはまさにそうなのでしょうね。

ただ、その正しい親を知りたいということについては墨田病院が閉鎖してしまったために診療記録などがなく、都に戸籍受付帳を閲覧させてほしいと請求したら、「100人以上の個人情報が含まれているものを見せることになり、その点で問題あり」ということでダメだったのだそう。これは一審判決を受けてのものなので高裁判決を受けて多少変わるのかもしれませんがどうですかね。役人の人は硬いですからね。
ま、確かに100人以上の人のプライバシーに関わることではあるので、難しい問題ではあるのですが。