のりビーが覚醒剤をやっていた…というのも何か未だにくすぶっているとかいう話もありますが、くすぶっている度合いでいうと押尾学氏の事件の方もそんな感じで、一緒にいた女性の死亡の経緯とかで任意の事情聴取を受けたとかどうとか。
保護責任者遺棄致死が成立するんではないかとかそういう話も依然として根強いようで。
でも、実際のところどうなんでしょ。
一応数年前までは一応法律を勉強したりしていたので(苦笑)、そのときの判例とかを思い出すと、今回のに一番近いのは多分これかなと思います。数年前まで勉強していたという立場ですので、勉強しなくなった最近になって類似ケースで最新判例が出たという可能性も無きにしもあらずですが…
最大判平成元12月15日(裁判所判例検索)
「なお、保護責任者遺棄致死の点につき職権により検討する。原判決の認定によれば、被害者の女性が被告人らによって注射された覚醒剤により錯乱状態に陥った午前零時半ころの時点において、直ちに被告人が救急医療を要請していれば、同女が年若く(当時十三年)、生命力が旺盛で、特段の疾病がなかったことから、十中八九同女の救命が可能であったというのである。そうすると、同女の救命は合理的疑いを超える程度に確実であったと認められるから、被告人がこのような措置をとることなく漫然同女を……放置した行為と……同女が……死亡した結果の間には相当因果関係があると認めるのが相当……保護責任者遺棄致死罪の成立……」
となっております。
原判決の札幌高裁の判決まで探す力がないので、記憶に頼ることになりますと、ヤクザの男が13歳の女の子をホテルに連れていって覚醒剤を打ってたら女の子の様子がおかしくなったので慌てたのかさっさと見捨てたのかは忘れましたけど、とにかく去った、そうしたらそのまま死亡したということで経緯なんかは大体似てる気がします。
ただ、この事件と押尾氏の場合とを対比すると若干、こちらの判決の事件の方がより保護責任者遺棄が認められる可能性は強いのかなというのも正直な感想。
まず、未成年の子を連れ込んだというのというのと、30歳というのとでは判例の言うところの生命力のあたりも微妙ですし、大分違ってくる。また判決の中にはないものの、そこにいたるまでの経緯で13歳の子なら相手に全面的に依存せざるをえないものの、30歳だとそうとも言えない(もちろん、押尾氏が騙したとか力ずくという可能性も無くはないし、そうだとすると処罰要請は高まるものの、今のところ遺族の人もそういうことは言ってないっぽいので、その可能性は少なそう)。
で、押尾氏は一応心臓マッサージ等の救命措置はしたらしいという話もあり、救命要請はしてないものの漫然と放置して去ったというわけではなさそう。
もちろん、だから押尾氏の場合はこの判例に照らせばnot guiltyになるかというとそうでもなくて、結局のところ「十中八九助かったかどうか」というところになるんでしょう。助かったと判断すれば保護責任遺棄致死になりうるし、そうでないのなら成立しないと。で、とりあえずこの判例あたりを基準にする限りでは少し確率が落ちるのではという要素の方が多いので、起訴に持ち込む自信がないという理屈はこれはありうる。
実際のところの事情については無論当事者でも目撃者でもないので、何とも言えませんが、こういう経緯なので女性の死亡に関する犯罪は成立しない可能性もありうるわけですから、スポーツ紙とかで法学部の教授とかが「成立したら懲役何年」とただ言ってるだけってのは引っかかる部分もあります。まあ、もちろん、学者がそう言ってるだけということはもちろんないでしょうから、スポーツ紙とか芸能誌の方でそこだけ抜書きして書いてるんでしょうけれど。
ただ、一応先例とかあるわけなんだから、ということでそのあたり裁判所の考え方も出していいんじゃないのかな~という気はします。特に裁判員制度とかも始まってるわけですし、こういう大きく取り上げられてる事件については、より、過去の裁判所基準とか知っておかなければいけないんじゃないのと思いますからね。PR