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その2

2009.10.20 - 戦国終わらず
主な登場人物
伊達政宗:奥州の独眼竜。犬は3日で恩を感じるが、政宗は100年飼っても恩を感じない。
片倉重長:小十郎景綱の息子でやっぱり小十郎。父親同様に頼りになる副官で、喧嘩は父親より強い。
松平忠輝:家康の六男で政宗の義子。見た目が悪いので、父親には嫌われている。
真田幸村:赤備え。本名は信繁ということになってるが、今回は有名な幸村の方で。
毛利勝永:目立たないけど、何気に無茶苦茶強い。
前田利常:加賀前田の三代目。
明石全登:名前は「たけのり」らしいが、「ぜんとう」でいい気がする。キリシタン大名。
宇喜多秀家:石田三成ばかりが有名だが、関ヶ原で一番西軍のために頑張った人。
徳川家康・秀忠:単なる思い付きだけで戦死させられてしまう可哀相な二人。
豊臣秀頼:関白。真価を発揮するのはもう少し後?
淀の方:秀頼の母親。真価を発揮するのはもう少し後?
藤堂高虎:そのうち出番が増えるから、もうちょっと待ってよ。
長宗我部盛親:そのうち出番があるかもしれないから、もうちょっと待ってよ。
毛利輝元:そのうち出番はある、と思う。
福島正則:近いうちに出番はあるはず。


前田筑前守利常は22歳。かの前田利家の五男であり、加賀百万石の礎を築いた兄利長の養子となって前田宗家の主となった。堂々たる体躯に聡明な印象を与える容姿は、堅実ではあったがスケールに欠けた兄よりも大きなものを感じさせる。
そんな利常の下には、冬の陣の頃から豊臣方からの内応の使節が幾たびもなく訪れていた。当然、父前田利家と秀吉の親交があったからゆえのものであったが、利常はこれまではそのことごとくを拒絶していた。
それがここに来て、豊臣方への内応、徳川に対する裏切りを決意した。
それは宇喜多秀家の筆頭家老であった明石全登からの密書があったからである。
かつて備前宰相と称され、豊臣政権下において最も将来を嘱望されていた宇喜多前中納言秀家は関ヶ原の戦の後、八丈島への流刑になっていた。石田三成と並ぶ戦犯であるにも関わらず、東軍が秀家を処刑できなかったのは大老という身もあったし、前田、島津らの懸命な助命があるなど、大きな人望を得ていたからである。その秀家の正室は利家の娘である豪姫、つまり利常にとって秀家は義兄にあたる。
「徳川勢にもしものことあらば、宇喜多と前田で関西以西を制さん」
そのような内容の密書が直前になって明石全登から送られてきたのは、だから全く縁のないところではなかったのである。
利常は通常受け取った密書を即座に破棄したり、家康への臣従を示すために家康の下に送った。しかし、今回に関してはすぐに応じることはなかったが、その密書を自分の中に秘匿していたのである。
そして、徳川家康の死が決定的になった瞬間で利常は決心した。前田と宇喜多で天下を握る、と。

明石全登はどうか。
明石全登は主君の秀家ほど豊臣秀頼に対して忠義心を抱いていなかった。秀頼に従うことにしたのは単に家康がキリシタン弾圧の姿勢をはっきりさせていたため、そうでない秀頼が天下を取ってもらう方がマシと考えたまでである。
そして、5月8日の決戦の日、真田幸村、毛利勝永らが懸命に秀頼出馬を請うたにもかかわらず、秀頼は淀殿や腹心らの制止にあって、結局出撃を断念した。
この瞬間、明石全登は秀頼を完全に見限った。
一方で戦況を見ると真田・毛利、特に毛利勝永がすさまじい働きを見せており、あわや逆転の可能性もあるかもしれない。
(だが、その果実を秀頼に食わせていいのか?)
明石は毛利勝永、真田幸村の戦いに尊敬の念すら抱いていた。だが、勝ったとしてもその二人が戦後どのように遇されるかは分からない。自分の反発心と大坂の行く末を考えると、秀頼のために戦わなければならない自分が急に馬鹿らしく思えてきた。
それならば、可能性は限りなく低いが旧主秀家を呼び戻して、秀家による豊臣政権を築かせた方がいいのではないか。
そう思い、前田利常に密書を送ると、少し経ってから突撃を開始したのである。
もちろん、前田がどう動くか全登には全く読めなかった。前田が応じなければみすみす大軍の中に自滅的な突撃を敢行するだけですぐに戦場の露になるかもしれない。だが、それはそれでいいとも全登は思っていた。キリシタンが弾圧される姿を自分が見ることはないし、秀頼の天下にもならずに済む。
そして、全登の賭けは成功した。
前田勢はするすると戦場の後ろに下がっており、岡山口の徳川勢の後退を阻んでいたのである。それは戦下手な秀忠らを大混乱させるには十分過ぎた。
秀忠は自棄を起こして槍を持って突撃しようとした。一度目は「それは総大将のすることではない」といさめられたが、戦況が変わらない中でどう退却すればいいかも分からず、おまけに大和方面軍なども動かない。
結局、秀忠は今はこれまでと突撃し、そのまま戻らなくなった。戦死したのか、自害したのか、あるいは逃げたのかは分からないが、戻ってこない以上は征夷大将軍徳川秀忠は死んだと見るよりない。
とはいえ、死んだといっても相手に討ち取られたとあっては響きが悪いので、仕方なく自害ということで伝令が飛んだ。政宗が受けたのはその報告である。
岡山口の徳川軍は混乱この上ない状態に陥り、一部の死に怯えた部隊は味方を襲って、自分達は大坂方であると言いはじめる始末であった。

伊達政宗にもその様子が飲み込めてきた。
「いかがなさいます?」
片倉重長が尋ねる。
「退くしかなかろう。今ならば、豊臣方も完全な状態では追ってはくるまい。上総介殿(松平忠輝)にも伝えてくれ」
「承知しました」
伊達勢はほどなく撤退を開始し、それに応じて松平忠輝も退き始める。忠輝が退いたのを見ると、他の大和勢も後退を始めた。

正午前に始まった戦は酉の刻(午後6時)前には終了した。
大混乱に陥った東軍は壊滅状態のまま四散し、松平忠直の奮戦と真田・毛利勢が追撃を熱心に行わなかったことで辛うじて撤退に持ち込むことができたという惨状であった。唯一大和方面に陣取った部隊のみが整然と引き揚げていおり、その大和路の軍に対しても大坂方も追撃をかけることがなかった。彼らも疲弊の極みに達していたのである。
東軍は無数の将兵が討ち死にした。
何より、家康・秀忠の死は終結に向かっていた戦国乱世を再び元に戻しかねないほどの戦果であった。

大坂城では、豊臣秀頼や淀の方がまさかの勝利に半ば呆然としながらも、古今稀に見る活躍をした毛利勝永、真田幸村の二人をはじめ、諸将に褒美を授けている。
だが、そんな中で、明石全登だけはひたすら書状をしたためていた。

翌日。
大和から粛々と尾張方面へと向かう伊達政宗のところに、明石全登の密使が現れていた。
「ふむ…」
政宗は書状を見て、にやりと笑みを浮かべる。
「何と書いてあるのですか?」
「昨日の戦いの後に収容した大御所・将軍の首を返還するゆえ、前の関ヶ原で流刑になった宇喜多前中納言秀家の釈放手続をとってほしいとある」
「…それは伊達が決めることでは…」
重長が首を傾げて答える。流刑の釈放を決めるのは徳川家であり、あるいは朝廷であった。確かに伊達政宗は東軍でも随一の戦力を有してはいるが、勝手に流刑の秀家を釈放することなどできない。
「重長、分からぬか? これは上総介殿の名でしてほしいということだ」
「あっ…」
「大御所様と征夷大将軍様がお隠れになった。そうなると、当然次を誰か決めねばならない」
「戦後処理をきちんと済ませれば、上総介様が次の征夷大将軍になる可能性が高いというわけでございますな」
重長の問いに政宗は笑みを浮かべているだけであった。
「明石が前田と組んで暴れてくれれば、ふふふふ、面白くなりそうだ」
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