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「戦国終わらず」その9

2009.11.16 - 戦国終わらず
そろそろ、目次みたいな感じで1から出していった方がいいですかね~。
といっても、昔某童話もので目次作るのが大変だったので1~20なんて続いたりするだけで気が遠くなりそうなのですが…(笑)



加賀・金沢城。
城主にして加賀能登120万石の主前田筑前守利常の正室珠姫は5月以降、毎日のように悲嘆の涙に暮れる日々を送っていた。
珠姫の父親は江戸幕府第2代将軍徳川秀忠である。
その徳川秀忠が大坂で戦死したというのも彼女にとっての不幸だが、それを決定づけたのが利常であったというのもまた彼女を悲しみの淵に叩き落していた。
ただ、彼女にとって悲しいというのは必ずしも父親が死んだということではない。もちろん、それも悲しいのであるが何より不安なのはこのことによって自分が放逐されてしまうのではないかということであった。
3歳の時に政略結婚で金沢に来た珠であるが、利常との相性は良く、仲むつまじく過ごしており、16歳にして既に母親となっており、現在も妊娠中(正史では4代目となる後の光高。この話では未定[苦笑])である。
そもそも3歳で金沢に来ているのであるから、江戸に対する思い入れなどはない。彼女は金沢が気に行っていて、申し分のない夫に恵まれたと思っている。
であるから、余計に夫が父を討ったという事態は恐ろしいものである。徳川家との決別を表明した以上、珠は利常にとって政治的には不要なものである。直ちに処刑されるということはないにしても、出家を強要されるかもしれないし、江戸に送り返されるかもしれない。仮に残ることができたとしても、敵対勢力の女を正室にしておくのは通常ありえない。となると、誰か別の女を迎えて正室にする可能性もある。正室の座を取られるのは仕方がないにしても、寵愛が奪われるのは耐えられないことであった。
そうした恐怖から、珠は利常が戻ってくるのを極度に恐れていた。もちろん、夫に会えない寂しさは募るのであるが、帰ってこない限りは送り返されたり、最悪の事態に至る可能性は低い。

6月1日。
前田利常は金沢に戻ってきた。利常は直ちに城に入り、珠姫のいる奥の間へと向かう。
「珠、いるか」
中に入ると、珠は入口に背中を向けていた。それが利常にはあたかも自分を拒絶しているように見えるが、実際には珠も珠で怖くて利常の方を向く勇気がないということがある。
「珠…」
利常は付近の侍女や乳母を一睨みにして隣室に下がらせ、その場で座り込む。
「済まぬ、珠」
「殿…」
利常はその場で平伏したが、珠はそれでも振り向けない。謝っているのが何に対してなのか分からないからである。このまま離縁を宣言されたらどうすればいいのか、珠が裾を握る手に力がこもる。
「わしはお前の父を討った」
「…存じております」
震える声で返事が返ってくる。
「わしは義父様が憎かったわけではない。だが、このようなことも戦国の習い。前田が天下を取るためにそうせざるをえなかったのじゃ。許してくれ」
「……」
利常は正室の無言を拒絶と受取り、溜息をついた。
「…わしはそなたと離れたくはない。だが、そなたがわしを許せぬ、もういたくないというのなら詮無きこと。徳川家に戻るというのなら手配の準備をいたす。好きなように申してくれい」
「…江戸には、戻りたくありませぬ」
珠が振り返り、利常のそばに歩み寄る。
「私は、金沢に、殿のそばにいとうござります」
「だが、わしはそなたの父を討ったのだぞ?」
「分かっておりまする。ですが、私は前田家の女でございます。前田家の繁栄のために、殿がなされたことであれば私は何も申しません」
「珠…」
利常は涙を流して、珠を抱き締める。
「どうか、どうかおそばに置いてくださいませ」
珠も涙を流しながら、利常の背中へと手を回した。

奥の間から出てきた利常に本多政重が近づいてきた。
「殿、奥に会われていたのですか?」
「ああ」
「それでいかに?」
「珠は許すと申してくれた…」
「左様でございますか。それで…」
「何だ?」
「殿と奥方様の仲の良さは存じておりますが、この先はいかがなされますか?」
「何もせん。珠が望むならともかく、わしの方から珠を離縁したりすることは断じてない」
「ただ、今後のことを考えると…」
政重は尚も何か言おうとするが、利常はそれを遮るように言う。
「大和。お主の言いたいことは分かる。それが正しいことも分かる。だがわしにとって珠以上の妻はおらぬのじゃ。離縁はできぬ。正室から下ろすこともできぬ…」
「そうまで申すのなら仕方ありませぬ。某も奥方様に含むところは何一つございませぬゆえ、殿がそう申すのなら、他の者にもその旨を伝えて参りましょう」
「済まぬ」

利常は本田政重としばらく今後の方針について話をする。その間は活き活きとした顔をしていたが、一点政重と別れるとまた珠に会いに行く前の浮かない顔になった。また会いに行きたくない人物と会いに行かなければならないという態度がみえみえで、このあたりはまだ22歳という前田利常の若さを示しているとも言える。
利常は溜息をつきながら、城内を歩く。
その行き着いた先は藩祖ともいえる父前田利家が生前利用していた部屋であった。
中には従者以外に2人の女性がいた。1人は既に老境にさしかかっており、もう1人も若いとはいえない。
「これは殿…」
老境に差し掛かった利家の正室まつであった。
「金沢に戻っておられたのですか」
話している内容は普通であるが、言葉の節々に毒というか嫌味が入っているのを利常は感じた。
(まあ、無理もなかろうか)
まつは利家亡き後の前田・徳川の間を必死につないできた人物である。利長に謀反の疑いがあったときには率先して江戸に赴き自ら人質になり、そこで交渉役を務めるなど非凡な能力を見せている。彼女がいたから前田家が120万石を保てているといっても過言ではない。
その彼女が必死でつなぎとめていた前田・徳川間を利常がひっくり返したのであるから、面白いはずはない。
加えて、まつは利家の正室であるが、利常の母親ではない。また、利常の母親である千代保(おちょぼ)とは険悪な仲であり、これもまた利常にとっては頭が痛いところである。
「はい」
「それで殿!」
もう一人の女性はというと、こちらは期待に満ちた眼差しを向けていた。前田利家の四女豪姫である。
「姉上。急な話ですが、二日後に江戸に向かってもらってよろしいでしょうか?」
利常の言葉に豪の目が輝く。
「それは…」
「はい。宇喜多殿をまず金沢に迎えるつもりですので、その使節になってほしいと思っています。大和守も同行させますゆえ」
利常が本多政重を同行役に選んだのは一番の重臣ということもあるが、元々関ヶ原の頃までは宇喜多秀家の家臣であったことにもよる。関ヶ原で善戦したが、宇喜多秀家が取り潰しにあってしまったため、前田家に来ることになったのである。
「…ああ、孫九郎や小平治にも会えるのですね」
「はい」
「母上、うれしゅうございます」
豪はまつに嬉し泣きをしながら抱きつく。さすがに娘がここまで喜んでいるとあってはまつも利常に嫌味を言えなくなったらしい。
「殿、ありがとうございます」
「いいえ、義兄上を金沢に連れてくるのはあくまで初手にござりますゆえ」
「それは頼もしい」
「現在、大膳(横山長知)と九郎左衛門(長連達)が大坂との折衝に当たっておりますが、近江に10万から15万石ほどの加増となる確約は得ております。高島のあたりならば良いとは思っておるのですが」
少し緩んでいたまつの顔がまた険しくなる。
「殿、私に遠慮してそのようなことをするのならば、それはいらぬ遠慮です」
「…義母上?」
「殿は徳川を討つことで前田の天下を夢見ているのでありましょう? ならば一番天下に近い要所をいただけるようにしてください」
「は、はあ…」
「私は孫娘達に自分の化粧領の近くにこだわらせたがゆえに前田の天下を失わせたなどと言われとうはございませぬ。この老人に構わず、有効な手を打ちなさい」
「…分かりもうした」

今回は前田オンリーに。やっぱ120万石(利常が死後に支藩を作って100万石になったらしい)だけあって色々あります。
本当は横山長知あたりと利常が険悪になるところなんかもあればいいのかもしれませんけどねー。
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