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「戦国終わらず」その8

2009.11.14 - 戦国終わらず
6月4日。江戸から徳川秀忠の正室お江与の方と2人の子供竹千代、国松が駿府に到着した。
到着した3人と佐竹義宣が最初に行ったことは竹千代と国松の元服である。それぞれ徳川家光、徳川忠長と名乗ることになったこれが将軍位を見据えたうえでの元服であることは言うまでもない。
翌日から家光と義宣は譜代の家臣の間を回る。もちろん、世間話をするわけではなく、家光将軍に向けての足場固めをするためであった。
ただ、そこにいたるまで全く問題がなかったわけではない。実はお江与の方は長男の竹千代よりも国松の方を寵愛しており、できれば忠長となった次男を将軍にしたいと考えていた。実際、それを佐竹義宣に打診したのだが、だが義宣からは「嫡男の竹千代様を外してしまえば、上総介(忠輝)が将軍になりうる理由を与えてしまうことになる」と強くいさめられた。
また、国松を後継にしようとすると、竹千代の乳母のお福が反対派に回ってしまう可能性がある。傲慢なお江与の方もお福の能力は評価していたし、彼女がいなくなると困るという思いもある。そこでやむなく、国松を将軍にすることは諦めたのである。

葬儀に先立って、徳川一門が勢ぞろいして今後の善後策を話し合うことになった。
参加しているのは以下の者であると言いつつ、本来いなければならない誰か抜かしてる可能性はあるけど。そういう人がいたら指摘してください)。

お江与の方
お福
徳川家光
徳川忠長
松平忠輝
松平忠直
徳川義直
徳川頼宣
徳川頼房
伊達政宗
正木頼忠
佐竹義宣

ここでも政宗は家のことという理由で譜代の参加を認めなかった。だが、お江与の方が強く主張したこともあって佐竹義宣の参加だけは認められている。
「以前、お台所様に申し上げました通り、大坂方との和睦内容で徳川家が次の将軍位を出すことを認める旨の内容を入れてもらいました」
挨拶もそこそこに政宗が切り出す。お江与も義宣も予想していた話であるので、さほど驚かない。
「なれど。上様と大御所様がそろって突然にみまかわれたということで、お二方が誰を後継と考えていたかは定かではござりませぬ」
政宗の言葉に周囲の緊張が高まる。何人かがちらちらと忠輝に視線を向ける。政宗もその様子には気付いていたようであるが、意に介することなく話し続けた。
「とはいえ、順序としては上様の嫡男が継ぐのが順当かと思います。ちょうど竹千代様が元服されましたことですし、竹千代様が将軍となられるのが筋ではないかと…」
「異論はござらぬ」
義宣が答える。この間、義直、頼宣、頼房らは何の発言もしない。というよりまだ20にもならない彼らに歴戦の二人の話し合いに割って入ることなどできないという方が正しいであろう。また、頼宣、頼房の二人の祖父である正木頼忠は実績のほとんどない数合わせのような存在に過ぎないし、本人もそれを自覚しているのか何も言わない。
「では、竹千代様が将軍となられることに反対する者はございますまいな?」
政宗は全員を見渡すが、誰も反対しない。
「では、葬儀が終わり喪に服した後、そのように取り計らうことにいたします」
政宗はそう言うと家光に向かい、平伏した。他の者達もそれに続く。家光は少し怯えたような様子でそれを受けていた。
「とはいえ、上様は元服されたばかりで幕府の政務をすべて見るのは難しいと考えます」
政宗の言葉は続く。
「そこで、某は実績ある上総介様が将軍を後見するという形式をとるのがよいのではないかと思います」
「あいや、待たれよ」
義宣が左手をあげる。
「何でござるか?」
「実績があるといわれるが、上総介様にしてもまだ25にござるし、幕府の中で何かをしていたということはござらぬ。某は別に上総介様の器量に疑いを抱いているわけではござらぬが、こちらには前の戦で実績をあげた越前様がおられるわけですから、越前様と上総介様のお二方で見るというのがようござらぬか?」
義宣は元々筋書き通りのことを読んでいるかのような棒読みめいた様子で話した。
「…それは別に問題ござらぬが」
政宗は一瞬、戸惑いの表情を見せたものの、すぐに余裕の様子で答えた。

その夕方。伊達屋敷。
戻ってきた政宗は真田幸村を呼んで経過を報告していた。本来の腹心片倉重長は有力大名らへの見回しや情報収集にあたっている。徳川方では表立って行動のできない立場にいる幸村は政宗にとってはいい相談相手であるといえた。
「…ということで、大方予想通りのところに落ち着いた。佐竹が越前守を後見人と言ってきたことにはやや驚いたがな」
「それについては…?」
「認めた。あまり佐竹やお江与殿と対決しすぎるのもよくないからな。越前も所詮は若造だからそれほど恐れることではないし、それにそもそも奴の父親は徳川宗家に冷遇されていたから、心情的に幕府中枢に肩入れすることもないだろう」
「確かに。越前では松平忠直ではなく結城忠直を名乗っているという話も聞いたことがあります」
「詳しいのう」
「真田の草も中々有能ですので」
幸村の言葉に政宗は満足そうに頷く。真田の草(忍び)が有能であるということは、それを使うことのできる政宗にとってはいいことである。
「あるいは前田あたりを焚きつけて攻め込ませてみるのも面白かろう。大坂では機微よく活躍できたが、所詮大御所や秀忠が戦死した混乱をついての徒花に過ぎんということが判明するだろうからな。葬儀が終われば、その頼りになる真田の草に早速動いてもらおう。おっ」
玄関の方の話し声に政宗が反応した。重長が戻ってきたのである。しばらく待っていると足音高らかに重長が入ってきた。
「どうだった?」
「はい。竹千代様の将軍就任ということで大方の者は安堵しているようですが、我々がどう動くかということには依然として警戒が強いようです」
「そうか。今、ちょうどその話をしていたが、まずは佐竹が後見人として選んだ越前守を陥れようと思うておる」
政宗の言葉に、重長の目つきが険しくなった。戦場でならともかく、こういう話の中で彼が政宗に対して過敏な反応を見せるのは珍しいし、政宗も当然そのことに気付く。
「どうした…?」
「越前守殿といいますと去る27日に榊原殿(康勝。四天王康政の三男)が亡くなられて空位となった館林13万石を越前守に与えようという動きがあるようです」
「おお、それはわしも聞いておる」
政宗はあまり意に介している様子ではない。
大坂の陣で激戦地にいた幕府方の大半の大名が何とか逃げ延びることができたのは松平忠直の功績が大きいというのは多くの者が知っているところである。当然、その功績に関しては評価しなければならず、ちょうど榊原康勝が病死して空位となった館林13万石を加増するというのは誰かが損をするということもないので、まるで問題のない話である。
既に越前75万石を領している忠直がさらに13万石を得るとなると禄高は90万石近くにまで及ぶ。
だが、政宗にとってはそれでも90万石、くらいの認識であった。
政宗の領している仙台は62万石ということになっているが、実際にはもう少し大きいし、今後の整備如何では100万石までいたるという自信が政宗にはあった。また、忠輝も越後75万石を有しているが、これも実質は政宗の間接的に統治している領土である。
となると、忠直程度が90万石程度を有したところで何になるかという自負が政宗にあった。
であるから、その話があった時に政宗はむしろ賛同していたのであるし、葬儀の前にその論功行賞が行われるという話も聞いていた。
「それが…」
「どうした?」
「越前守はその領土を立花左近将監殿に与えるように手配したという話です」
政宗の表情が変わる。
「左近将監とな…?」
政宗ももちろん、立花宗茂の戦場での実力を知っている。
そして重長の先ほどの様子についても納得できた。
松平忠直程度ならば怖くはない。
しかし、立花宗茂が出てくるとなると話は全く変わってくる。松平忠直と立花宗茂が接近しているというのは好ましい話とはいえなかった。
しかも、そうなってくると佐竹義宣らが松平忠直を忠輝とともに家光の共同後見人にしようとしたことの意味も変わってくる。佐竹義宣は現時点では江戸譜代の意見を代表しうる存在であるから、義宣も立花宗茂と接近しようとしていることが考えられる。
「うむ…越前守が左近将監と接近していたというのを気付かなんだはわしの失態だった。葬儀が終われば本格的に仙台で考え直す必要があるかもしれんな」
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