忍者ブログ

[PR]

2024.04.19 - 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

その4

2009.10.24 - 戦国終わらず
今回出てくるマイナー武将。
真田信之:幸村の兄。伊豆守。本多忠勝の娘を正室とし、真田の命脈を絶賛繋ぎ中。
小笠原秀政:松本領主。天王寺の戦いで毛利勝永にやられて長男とともに戦死した。
小笠原忠真:秀政の次男。史実では宮本武蔵が仕えたこともあるが、当然そんなの関係ねぇ。


5月11日。
大野治長、真田幸村ら大坂方の使節が松平忠輝、徳川義直、伊達政宗のいる名古屋城に到着した。
形式的な挨拶を交わすと、政宗と幸村が二人で名古屋城の二の丸に入る。和睦をするに際し、条件についての下交渉をするためである。
「伊達陸奥守政宗でござる」
「真田左衛門佐幸村にござる」
同じ歳の二人が挨拶をする。
「先日の貴殿の戦いは見ておった。まことに見事というしかござらぬ」
政宗が幸村を褒める。その様子には悔しさを押し隠しているというような様子はない。むしろ本当に感謝しているかのようであった。
実際、政宗は幸村に感謝していたのであるが。
「何の。此度は類稀な幸運に恵まれてのこと。本来ならば内府殿の天下定まりしところ、横槍を入れて申し訳ござらぬ」
「これは異なことを言われる。内府殿の天下を阻むために大坂に入られたのではござらぬのか?」
政宗が片目を細めて言う。
「確かにそうなれど、内府殿を阻むというよりは…」
「武門の意地、というやつでござろうか?」
「左様にござる」
「なれば真田殿、武門の意地果たされた今、何をしようと考えておられる?」
「む…?」
「秀頼公から近江・彦根あたりにでも10万石を受取り、今後も我ら徳川勢を阻まれるおつもりか?」
「…そのようなことは考えてござらぬ」
幸村はやや慌てた様子で答える。
「まだ和睦も決まってござらぬのに領地のことなど。とりあえず和睦を成し、あとは秀頼公のご指示を待つのみ」
「真田殿」
政宗が正座の姿勢で半歩ほどにじり寄る。
「…信濃が欲しゅうはござらぬか?」
「……」
「小笠原兵部少輔が戦死したので松本8万石が空いておる。わしがうまく図って伊豆守殿(真田信之)を通じて貴殿にくれてやろう。そしてうまくいった暁には…」
政宗の声は既に十分落とされているが、更に小さな声で言う。
「信濃だけでなく上野と甲斐も真田殿に差し上げよう」
幸村は思わず生唾を飲み込んだ。

家康・秀忠が死んだ以上、当然幕府内では後継を巡る騒動が起きる。その中で最有力なのは松平忠輝と伊達政宗であり、幸村自身や大坂方の総意としては、彼らに徳川方を乗っ取らせるよう仕向けるつもりでいた。
とはいえ、もちろん徳川方も政宗と忠輝に簡単に幕府の権限を渡すとは思えない。四天王の一族や本多正純などが妨害をしてくるであろうことは幼子にでも予想できることである。
彼らが伊達政宗に勝てるかというと勝てるとは思わない。しかし、佐竹義宣なども加えて反伊達勢を結成すればそうそう簡単に伊達が勝つともいかないだろう。
そこまでは幸村も当然予測していたが、その先、伊達政宗が誰を引き込むかということについては自分が徳川方にいないことから想像していなかった。
そこで突然の勧誘である。
関ヶ原で石田三成が幸村の父真田昌幸に約束していたのは信濃を含む三ヶ国である。昌幸は上田で秀忠軍を食い止め、三国を受け取るにふさわしい働きをしたが、関ヶ原で石田三成が敗れたために実現しなかった。兄信之は西軍にいたということもあって、加増されたがそれにしても一国支配にも至っていない。
幸村に一国支配の可能性がなかったわけではない。夏の陣の直前に家康から一国と引き換えに大坂を出よという誘いがあった。
それは武門の意地もあって受けることはできなかったが、意地を果たした現在は、特にこだわることもない。
今、再び真田が三ヶ国を所有できるかもしれない好機がぶらさがっている。
しかも、父祖伝来の地上野を約束されると…

「……」
「今は話だけにしておこう。本当に貴殿がわしの下に来るのなら、その時は誓詞を差し出してもよい。花押に穴も開けておくでな」
政宗はそう言って笑う。
花王の穴、というのはかつて大崎一揆の際のことである。政宗が裏で一揆を扇動していたのではないかと疑った豊臣秀吉や蒲生氏郷らが政宗が一揆側人物にあてた書状を発見し、政宗を問い詰めたのであるが、政宗はそれが偽文であると主張、自分の花押には針で小さな穴を開けてあるというのがその理由で実際、一揆衆への書状には穴がなく、その他の書状には穴があったことから政宗の嫌疑は晴れたという事件であった。
「今は和睦が先決じゃ。条件を聞こう」
「はっ。まずは内府殿と秀忠殿の首と体を返還いたす」
「うむ」
「それで京は豊臣方が支配…」
幸村は自分の言葉に驚いた。彼は「我々豊臣方」というつもりだったのが、実際の言葉からは我々が抜けていたのである。
「豊臣方が支配してござるが、忠輝殿の使節の通行は認めることにいたす。そのうえで徳川家の誰かが征夷大将軍位を承継することには、大坂は反対しないつもりでござる」
「あざとうござるな。だが、有難く受け入れよう」
「替わりに、豊臣方としては近江・大和の領有権を認めていただきたい」
「…そのあたりで妥当であろうな」
「あと、前の関ヶ原の戦いの折、流刑にされた宇喜多殿の流刑を解いていただきとうござる」
「良かろう」
政宗の即答に幸村はけげんな顔をして、再度確認する。
「宇喜多前中納言殿のことでござるが、本当によろしゅうござるか?」
「構わぬ。前田筑前守が大坂方についた時点で予測しておった」
「左様でござるか」
「千姫はいかがされる?」
「秀頼公とは仲むつまじく、将軍殿の死を聞いても大坂に留まるつもりでございます」
「なれば、その儀はまた後で決めるがよろしかろうな。こんなところか」
政宗は腕を組む。
「どちらが得をしているのかよう分からぬが、他人の家の戦であれば、和睦条件などどうとでもいい気になるものだ」
「どちらも得になると思うから、和睦がされるのでありましょう」
「然り」
政宗は頷いた。
「ただ、今は大坂にいる某から見ても伊達殿にとっては非常に有利な条件でござる」
「だと有難い。だが…」
「だが…」
「もう少しわしのところで働く者が欲しい」
「伊達殿の下には十分過ぎるほどおるかと思いますが」
「いやいや、少なくとも内府や秀頼公に比べると。おまけに残念ながらわしの腹心を務めておった小十郎景綱はもう長くはないとのことだ。重長は若い割にゆうやっておるが…」
「道明寺での片倉殿の働きは某も感服つかまつりました」
「ほう、関東に男はおらぬと申していたとのことだが?」
政宗がにやりと笑う。幸村は照れ笑いで応じた。
「それは確かでござるが、あの戦いでの片倉殿の働きには確かに感服つかまつりました。実は遠巻きながら一言、二言話もしてござる」
政宗は「ほう」と驚いた様子を見せた。
「それはわしも知らなんだ。重長め、わしに隠しておったとは」
「と申しても、万一の時には娘と息子のことを頼むと頼んだまでで」
注:実際には夏の陣の最中に輿入れさせたらしい。
「今はどうなのだ?」
「特に考えてはござらぬ」
「重長には子がおらぬでな。貴殿の息女を迎えられるとあらば喜ぶであろう」
「それならば、そのようにいたしましょう」
幸村が答えて頭を下げる。元々二人は対等の立場ということで来ており、それだからこそ二人で別の場で話をしていたのであるが、この時点で幸村は半ば政宗を主のように扱っていた。
翌日5月12日、両名が話を通したこともあって和睦は正式に成立した。
同日、幸村は大坂方に真田忍を派遣し、忍から報告を受けた幸村の長男大介幸昌は姉を名古屋に送る。

5月25日、片倉重長と真田幸村の娘阿梅の婚礼が成立した。
それはあたかも真田幸村が伊達政宗の一陪臣になったかのようであった。


ああ、やっぱり幸村は夏の陣で戦死してこその幸村だった(笑)
PR

Comment

TITLE:
NAME:
MAIL:
URL:
COLOR:
EMOJI: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT:
Password: ※1
Secret:  管理者にだけ表示を許可する※2
※1 パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。
※2 チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。

TrackBack

TrackBackURL  :
 プロフィール 
HN:
川の果て
性別:
男性
自己紹介:
Favorite Team
 Americanfootball
 Chicago Bears
 Jacksonville Jaguars

 Football
 Leeds United
 FC Dynamo Kiyv
 IFK Goteborg
 VfB Stuttgart
 Shonan Belmare
 etc...

 Baseball
 Tokyo Yakult Swallows

 アンケート 
 兄弟?ブログ 
管理人専用・管理ページへ

Otava
Twitterをまとめてみたもの。
 あけるなるの部屋 
 最新コメント 
[10/16 川の果て]
[10/16 Grendel]
[10/13 アッペルシーニ]
[10/13 セパック ボラ]
[10/10 緑一色]
 Twitter 
 カウンター 
  
あわせて読みたい
 アクセス解析 
▼ リンク
リンク

阿呆LOG

もあぱそ

のぶたと南の島生活in石垣島

Too Much Information(3?歳のつぶやき...改)

off  the  ball

地理屋の思いつき

フットボール一喜一憂

キングのオキラク蹴球記

ふぉるてブログ~小田急線梅ヶ丘駅の不動産会社フォルテの徒然~

破壊王子流勝手日記

加賀もんのブログ

ニセモノのくせに生意気だ

時評親爺

UMATOTO2号館・本館

コグログ

スコログ

スポーツ井戸端会議+α

おちゃつのちょっとマイルドなblog

自分的な日常

しろくろひつじの見る夢は

スカンジナビア・サッカーニュース

Ali della liberta (in Stadio)

ごったでざったなどぶろぐ

一期一会~人と人との出会い~

オレンジころころ

◆ Football Kingdom ◆

What's On...

あんとんきちなダンナ

kaizinBlog

田無の万華鏡 (旧名田無の日記帳)

サッカーへ

漠々糊々

大門の日常

めぐりあいズゴ

あれこれ随想記

店主のつぶやき

マスドライバー徒然日記

アロマサロンを開いてみて

【しろうとサッカー研究所】

わたし的ちょこっとだけシアワセ♪

とんま天狗は雲の上

ペッタンコ星人

RYAN ROAD

やっぱり★タムラ的永久崩壊日記

浦和レッズの逆襲日報

大阪から♪Backpackerかく語りき♪

スポーツ瓦版


休止中


がちゃの『のっぺ汁』的ぶろぐ。~サッカー中心~

CLUB☆ZECIKA

路上の風景~landscapes on the road

なんでも。


流れ星におねがいするのニャ!

フットボール問わず語り

Skandinaviska Nyheter ~スカンジナビア・ニュース~

Renaissance 復興の記

ひとりごと記録

フットボール言いたい放題

ごった煮

Star Prince JUGEM

プレミア “F"

EMBAIXADA サッカー・フリースタイルフットボール動画館

A lazy life

思いつくまま

Backpacker's♪快晴じゃーなる♪

九州っこ





▼ 
にほんブログ村 サッカーブログへ
にほんブログ村 野球ブログ 東京ヤクルトスワローズへ

[プレスブログ]価値あるブログに掲載料をお支払いします。
▼ ブログ内検索