川の果ての更に果てに

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2024.04.27 -

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一時期完全にゲーム雑誌みたいなサッカー雑誌になっていたワールドサッカーダイジェスト。
まあ、大枠は依然としてそのままですが、最近では「それだけではいかん」と思うようになったらしく、サイモン・クーパーがコラムを書いたりして、知的度が上がっております。
というか、クーパーみたいな人でも呼ばないと知的度が上がらないのが困ったものといえばそうなのですけれど、日本のライターはあまり社会学的見地とかそういうのは考えないで、その場限りの結果論とかない物ねだりが多いばかりなので仕方ないところですかね。二宮清純さんなんかは社会学も多少は入ってますけれど、時事と絡めることが多くて、長いスパンを見た見解とかは少ないような気はします。

閑話休題。
そのサイモン・クーパーが12月３週のダイジェストで10年間のサッカーの動向というのを書いておられていて、そこには、
１．スペインが強くなった
２．持てるものと持たざるものの二極化が進んだ
３．八百長が近未来は大きな禍をもたらしそう
という傾向を指摘されております。

そこで今回のタイトルである、Ｊの競争力です。ここでいう競争力はチーム力、というよりは選手獲得の争奪戦での体力とかそういうのですね。
これを端的に結果だけを見れば創設以降低下しているということになるのでしょう。最初の頃は大物外国人を呼んだりしていましたが、最近はそういうのはほぼ無理で、近年では中東に獲られる側になっております。
大分とか札幌のようにちょっと経営に手抜かりがあると獲得云々どころか経営危機になるところもあるということで、明るい展望というのはちょっと無さそうな気配。

では、Ｊリーグは争奪戦などの競争力はこのまま落ち続けるだけなのか、というと必ずしもそうでもないような気もします。
というのは、上にあるサイモン・クーパーのあげているここ10年の傾向というのは個人的にも納得できるものではあるのですが、次の10年を考えた時にどうなるのかというのがあります。例えば、二極化は更に進み、もっと悲惨なことになるのか…というとあながちそうでもないような気もしているんですね。

これはもう単純な話で日本の景気は悪いが、それは別に日本だけではなくて今は世界中景気が悪い。
んで、Footballの先進地域であるイタリアとかスペインなんてのはそんな中でもそんなに経済が強いところではない。ところがFootballの経営ではそんな現実を無視して、派手なことをしたりしているわけであります。
端的な例としてヴァレンシアは数百億の負債で沈没寸前だという話ですし、レアル・マドリーも数百億の負債があるにもかかわらず、今夏だけで300億も出資したりしております。
バルセロナは「そんなマネーゲームには参加していない」ということになっておりますが、そんな彼らにしても借金は百億単位であるということですから、世話がありません。

もちろん、もっと多くの借金を抱えているプレミアのクラブとかをはじめとして、借金だらけでも資金が回っているならとりあえず問題ないというのは金融の基本的なルールです。
しかし、この先10年資金が回る保証があるの？　という極めて単純な指摘も向けることができるわけですね。

例えばチャンピオンズリーグの放映権料は頭打ち状態だそうで、これは当然といえば当然でしょう。
サッカーという舞台では最高峰の大会であることは間違いありませんが、エンターテインメント性という点では顔ぶれは同じ、結果至上主義で試合もマンネリ化しております。
せめてプレーしている選手だけでも目新しいのがいればということになりますが、ここ二、三年は主役の顔ぶれも似たようなのばかりということで（バロンドールやFIFA最優秀選手の上位陣とかここ数年ほぼ同じ顔ぶれである）、フットボールというコンテンツの魅力はここ二年ほど大きく魅力を減じているように思います。
ＣＳ放送等のテレビ放映の広域化で利益を得たわけですが、テレビ放映はサッカーだけではありませんので他のエンターテインメントと比較していった場合に現在の状況では少しずつ下がっていくだろうと考えるのは難しくありません。もっと言えば、今までが高すぎるということでどこがでガクンと下がる可能性もあるかもしれません。

ということで、遠からぬ将来にバブルが発生する可能性がありますし、そうでないにしても今のイタリアの有力クラブあたりにあるように突然夢が終わって現実的に帰らなければならないというような可能性もあります。
プレミアはパトロンがつくのがＯＫということで、アラブの富豪などを抱えて何とかするという道もありそうではありますが、これに対しても抵抗が強いでしょうから、そうそう罷り通るとも思えません。

となると、どうなるかというと、今まで数十億単位で飛んでいたけれど、これからはそうはいかなくなるという極めて単純な想像ができます。そうなるとどうなるかというと、そのお金を頼りに投資したりしていたところが連鎖的に被害を受けるということ。

という想定をした場合、ではＪリーグはどうすべきかというと、現在はその資金の流れからは少し隔絶された位置におります。
無理矢理入って密接になって連鎖倒産の被害に遭うなんてことは馬鹿馬鹿しいので、当分のうちは黙って見ておくのがいいのでしょう。それこそ株と同じで今は欧州サッカーは最高値あたりに位置しているわけですが、最高値のあたりで買うのは根拠があるにしてもあまり賢い選択ではありません。
ましてや最高値を続けるだろう根拠はむしろ希薄なように思えますから、ここで頑張って買おうとするのは愚か者この上ありません。

現在のＪリーグはとりあえず給料の遅配はないようですし、大分にもかなり厳しいことを言うなど赤字に対するチェックがきっちりしているようですから、他所が落ちてくればＪリーグの地位は相対的に浮上します。
多少冷めた目で見ればそうなる公算が大きいように思えますから、景気の悪い今は大人しく我慢している方がいいということになるでしょう。

…ということで、結論として私個人は現在のＪリーグの移籍の考え方とか競争力について特別変えなければならない何かがあるとは、正直思ってはおりません。選手が海外に行くのを踏まえれば海外のスタンダードに合わせることは必要だろうと思いますが、そこでの競争力とか経営力とかはあまり考える必要はないと思います。
繰り返しになりますけれど、投資では乗り遅れてしまった以上、後追いは利益よりも損失のリスクが大きい。なら、成功モデルに無理無理ついていくとかそんなことをする必要はない。私は欧州サッカーは遠くない内に落ちてくるだろうとは思いますけれど、仮に落ちないにしても、別の道を模索した方が余程賢いということになります。
賢いというと再三書いてますけれど、サッカー協会の中で一番賢いように見えるのはアメリカサッカー協会なので、ＭＬＳと色々協力して違った道を模索してみるというのも悪くないのかもしれませんね。

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