川の果ての更に果てに

これまでの話　→　◆

「あ～あ、変な島に流されちゃった。どうしよう」
「しかし、アタイは諦めないよ。こういうところだからこそ、何かあるかもしれないよ」

壁に隠したロックウェルの絵、１７億８千万円で落札（読売新聞）

「あたしは王子ほど楽観的にはなれないわ」
さて、一方で、サメに袋叩きにされたサビオラタンは苦しそうに呻いていました。
「大丈夫ですか？」
「痛いぴょーん。何とかしてほしいぴょーん」
「このままではせっかくジャポンについても、天下一武道会に出られないかもしれませんね」
「そんなの嫌だぴょーん」
サビオラタンが泣きを入れていると、上空から声がしました。
『サビオラタン、塩を傷口の近くに塗りつけて、お日様の光を受けて乾かすのだ』
「…？　それをしたら痛くなくなるかぴょん？」
『すぐによくなるさ』
「やるぴょん」
早速サビオラタンは塩を傷口の近くに塗りつけはじめました。
「塩水が染みて痛いとか言ってなかったっけ？」
人魚姫の妹は首を傾げますが、サビオラタンは言われるままに塩をすりつけてお日様の下で横になります。
傷口に塩が入り、ヒリヒリと乾燥しはじめました。
「痛いぴょーん！！！」
サビオラタンはゴロゴロと横になりました。
「…だから言わんこっちゃない」
「くくぅ。ボクタンをこんな目に遭わせたのはどこの誰だぴょん！　出てくるぴょん！」
サビオラタンが怒って叫ぶと、木の上からバッと二匹の蟹が現れました。
「…やぁ、裏切り者のサビオラタン」
「お前たちは、シャギアディエゴとオルバガブリエルのフロストミリート兄弟ぴょん？」
「って言うか、ミリート兄弟も元ネタもマイナーなんだけど…」
人魚姫の妹の突っ込みを無視し、兄のディエゴが口を開きます。
「かぐや姫の命令で、お前たちを始末しにきた」
かぐや姫は以前、人魚姫一行に己の野望を頓挫させられたことがあり、人魚姫を逆恨みしていたのでした。
「だからって、どうしてお前たちまで言いなりになるぴょん？」
「フフン、我々は我々でこの地上に絶対に赦せない恨みがあるからだ」

＜やらせ質問＞７０％が「許せない」　毎日新聞など調査（毎日新聞）

「僕達の恨みは簡単には消えないよ。そうだよね、兄さん？」
「…それは、つまりガブリエルはありもしないケガをでっちあげられて白い巨人への入団を拒絶されたこと、ディエゴはせっかくチームがセリエＡ昇格を果たしたのに八百長でＣに降格させられたことの恨みかぴょん？」
「そういえばそんな恨みもあった…ボクらは正さなければならない！　力なき古い人間が支配する世の中を」
「余計に怒らせてどうすんのよ！」
人魚姫の妹の突っ込みをよそに、ミリート兄弟は向かってきました。。
「同じアルヘンの戦士同士、戦いたくないけど仕方ないぴょん！　…痛いぴょん！」
サビオラタンも飛びかかろうとしましたが、足が痛くてその場で飛び跳ねてしまいます。そこにディエゴの大きな鋏がブンと。
「ぴょ～ん」
またもはじきとばされ、サビオラタンは海中に放り投げられてしまいました。
「痛いぴょん！　海水が染みて痛いぴょ～ん！」
「…サビオラタン！」
人魚姫がスイスイと海中にサビオラタンを助けに行きました。
「う～ん。逃げるだけなら、あたしとお姉ちゃんとで役立たず二人をひきずって泳げばいいって話もあるけれど、相手もカニだから水中では動けるだろうし。カリューも怖いし」

さて、人魚姫の妹の思案を他所にサビオラタンをＫＯしたミリート兄弟はご満悦でした。
「怪我人にやられるほど僕達は弱くないさ。そうだよね、兄さん？」
「だったら元気なアタイがやってやろうじゃないのさ！」
王子様が竹刀を持ち出して、ミリート兄弟に飛び掛りました。
しかし、兄弟は散開して挟み撃ちにしようとします。
「フフン。アタイにはアンタ達の弱点はわかってんだよ。何たって、カニは前後には歩けないからね！」
「おっ。王子の奴、珍しく知的じゃん」
王子様はカニが前後に動けないことを利用し、岩肌へと追いつめようとします。そしてガブリエルを岩肌に追いつめると。
「さあさあさあ、アンタはこれで奥には逃げられないよ！　アタイの振り下ろす竹刀を受けるんだね！」
と、渾身の力で竹刀を振り下ろしました。
が、その瞬間、ガブリエルは空中に飛びました。
「しまった！　カニはジャンプができるんだった！」
王子様が悔やむも後の祭り。ガブリエルは王子様の背後をとり、はさみで両腕をはさんでしまいました。
「うわ、離すんだよ！」
「兄さん、コイツ、もう倒してしまっても…いいよね？」
「とどめは俺が刺そう」
ディエゴは大きな鋏をブンブン振り回しながらカニ歩きで王子様に向かってきました。王子様はガブリエルにガッチリと挟まれていて身動きが取れません。
「うわーっ！　カニにやられるなんてがっかりだよ！」
「…残念だが、サヨナラだ」
ディエゴがニヤリと笑いました。

TrackBackURL  ：